一草庵


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10月句

シンプルに生きんとすれど秋果実
何事も言ひたうなくて秋の暮

これからは何をよすがに秋の暮
折角の命拾ひし秋の暮

「ホトトギス」2月号より
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(十月)

残菊といふは季節の忘れもの
住む人を見た事は無く蔦紅葉
崩れ簗(やな)琵琶湖の翠深まりぬ

「円虹」より
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(九月)

しづかなる瞳を見るや萩の宿
名月が照らしてをりぬ父と子を
野地蔵と話す楽しみ彼岸花

「円虹」より
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(八月)

祈る日の多き八月書をとぢる
八月の喪服を飾るものは無し
八月の少女の髪は短くて

雨降つて香水のまた匂ひけり

「円虹」より

オラッショを繰り返しては長崎忌

金魚玉見詰める我も光りをり
向日葵は背の高過ぎる事も有る

気ばかりが焦る炎暑でありにけり
残暑てふ恐ろしきもの待ち受ける

仏花に千日紅は欠かされず
ふと我の施餓鬼を見たり夢覚めて

「ホトトギス」より
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(七月)

連歌てふものの廃れて宗祇の忌
水無瀬なる静かなふきゐ宗祇の忌

高台寺夜の茶会や星月夜

虫売の行灯見ゆる神社かな

「山茶花」より
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(六月)

十薬の花に十字やガラシャの忌

昼網に早速ガイガーカウンター
昼網を狙ふ三十路の亡母がゐて

横文字の苦手なをんな梅雨籠

「ホトトギス」より
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山茶花・6月〜10月号

くらやみの孕雀に皆優し
干草の山に凭れてハーモニカ

鹿鳴館かく夏手袋の舞ひしかも
馬車降りし夏手袋を受けとめぬ

小さき手ハンカチーフを握りしめ
麦酒飲む苦さの訳はいろいろと

曽根崎にピカソの柄の浴衣見る
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