山茶花・6月〜10月号
くらやみの孕雀に皆優し
干草の山に凭れてハーモニカ
鹿鳴館かく夏手袋の舞ひしかも
馬車降りし夏手袋を受けとめぬ
小さき手ハンカチーフを握りしめ
麦酒飲む苦さの訳はいろいろと
曽根崎にピカソの柄の浴衣見る
くらやみの孕雀に皆優し
干草の山に凭れてハーモニカ
鹿鳴館かく夏手袋の舞ひしかも
馬車降りし夏手袋を受けとめぬ
小さき手ハンカチーフを握りしめ
麦酒飲む苦さの訳はいろいろと
曽根崎にピカソの柄の浴衣見る
第二句集(平成十九年以後)
(七月〜九月)
サングラス買へば早速雨が降る
白靴を履き損ねたる曇り空
日本やどこか怪しき梅雨台風
些事ばかり心にかかる五月闇
原子核あそびに有らず百合の花
眠られぬ夏の夜小曲ばかりなる
季節詩を書けずトマトを試食する
夏川の橋風景も変はりけり
律儀なる祇園祭を見てをりぬ
打水に選挙車は容赦なく
天神の祭は一番太鼓から
貴婦人の紫煙の匂ひ夏館
背の高き男の影や夏帽子
片陰に主人眠りて写真館
よく聞けば御堂筋にも蝉時雨
ラムネ玉壊るる音の凄さかな
八月の喪服を飾るものは無し
フロントにシェフの辞表や夏ホテル
避暑客のロビーに集ふ嵐かな
日盛りに人ふたり待つ山の駅
寺町に墓碑さがしあて日の盛り
石造のマリア揺るがず長崎忌
炎天に黒衣の祈り指太き
引退と経ねんごろに盆の僧
くらがりの納屋に入れば蝿叩
いつまでも夏の形を変へぬ雲
十字架を背負ふ炎暑でありにけり
あなどれぬものの一つに夏の風邪
我が老を感じてしまふ夜の秋
秋暑し点滴針に血のこぼる
一日の入院で済みやや涼し
あらためて人を恋ふ日や鰯雲
口笛の音程下げて秋の暮
坂道を引き返したる秋日傘
バレリーナ視線の先に秋の蝶
ぎやまんの工房跡に秋の蝶
爽やかや昨日と同じ椅子なれど
琳派展迷ひ込んだる秋の蝶
秋の空うはの空なる二人かな
秋鯖の味冴えてきて手酌かな
観覧車動かぬ如く秋日和
あきあかね見かけぬ路地や黄昏るヽ
(七月〜九月)
サングラス買へば早速雨が降る
白靴を履き損ねたる曇り空
日本やどこか怪しき梅雨台風
些事ばかり心にかかる五月闇
原子核あそびに有らず百合の花
眠られぬ夏の夜小曲ばかりなる
季節詩を書けずトマトを試食する
夏川の橋風景も変はりけり
律儀なる祇園祭を見てをりぬ
打水に選挙車は容赦なく
天神の祭は一番太鼓から
貴婦人の紫煙の匂ひ夏館
背の高き男の影や夏帽子
片陰に主人眠りて写真館
よく聞けば御堂筋にも蝉時雨
ラムネ玉壊るる音の凄さかな
八月の喪服を飾るものは無し
フロントにシェフの辞表や夏ホテル
避暑客のロビーに集ふ嵐かな
日盛りに人ふたり待つ山の駅
寺町に墓碑さがしあて日の盛り
石造のマリア揺るがず長崎忌
炎天に黒衣の祈り指太き
引退と経ねんごろに盆の僧
くらがりの納屋に入れば蝿叩
いつまでも夏の形を変へぬ雲
十字架を背負ふ炎暑でありにけり
あなどれぬものの一つに夏の風邪
我が老を感じてしまふ夜の秋
秋暑し点滴針に血のこぼる
一日の入院で済みやや涼し
あらためて人を恋ふ日や鰯雲
口笛の音程下げて秋の暮
坂道を引き返したる秋日傘
バレリーナ視線の先に秋の蝶
ぎやまんの工房跡に秋の蝶
爽やかや昨日と同じ椅子なれど
琳派展迷ひ込んだる秋の蝶
秋の空うはの空なる二人かな
秋鯖の味冴えてきて手酌かな
観覧車動かぬ如く秋日和
あきあかね見かけぬ路地や黄昏るヽ
第二句集(平成十九年以後)
(一月〜三月)
ビロードのくれなゐの椅子去年今年
去年今年ひと粒の麦選びをり
それぞれの人に光や読初す
幼き日思ひ起こせし初雀
初雀けふも変らぬ遊びかな
初夢のさめても里を思ふかな
手毬唄うたひ衝くのは母かしら
頷くは姉の声なり雪女
馬車で行くバウハウス跡凍てつきし
焼栗を包む新聞フランス語
初戎過ぎて浪華の動き出す
寒菊や生田の宮の震災忌
寄席太鼓入つてしまふ寒の雨
寒梅や家族総出の日をしのぶ
冬薔薇見てゐるだけの女の子
本能が覚えてをりし雪の道
ひと回り遅れて雪崩まぬがれし
ふと目覚めネット長者の余寒かな
つかの間に外資の街や猫の恋
恋文を隠し持つたる春ショール
梅ヶ香を封じ込めたる文ひとつ
寄席も出来てんま天神春しぐれ
受験子の母の並ぶや天神社
森を伐り住宅にして豆を撒く
片栗の花に逢ひたし山深く
淡路島にし浦に鳴く千鳥かな
厄塚に納めきれざる事も有り
これからを考えてゐる春隣
雛の間に入れば揺るる絵蝋燭
享保雛かほ楽しとも哀しとも
雛飾る欠け少し有る箪笥かな
雛飾る笛見つからぬままにして
義経や雁風呂といふ浜に
雁風呂に人残されて津軽かな
ビル街に人影遠し春の雪
風と光ともに強くて春の雪
(一月〜三月)
ビロードのくれなゐの椅子去年今年
去年今年ひと粒の麦選びをり
それぞれの人に光や読初す
幼き日思ひ起こせし初雀
初雀けふも変らぬ遊びかな
初夢のさめても里を思ふかな
手毬唄うたひ衝くのは母かしら
頷くは姉の声なり雪女
馬車で行くバウハウス跡凍てつきし
焼栗を包む新聞フランス語
初戎過ぎて浪華の動き出す
寒菊や生田の宮の震災忌
寄席太鼓入つてしまふ寒の雨
寒梅や家族総出の日をしのぶ
冬薔薇見てゐるだけの女の子
本能が覚えてをりし雪の道
ひと回り遅れて雪崩まぬがれし
ふと目覚めネット長者の余寒かな
つかの間に外資の街や猫の恋
恋文を隠し持つたる春ショール
梅ヶ香を封じ込めたる文ひとつ
寄席も出来てんま天神春しぐれ
受験子の母の並ぶや天神社
森を伐り住宅にして豆を撒く
片栗の花に逢ひたし山深く
淡路島にし浦に鳴く千鳥かな
厄塚に納めきれざる事も有り
これからを考えてゐる春隣
雛の間に入れば揺るる絵蝋燭
享保雛かほ楽しとも哀しとも
雛飾る欠け少し有る箪笥かな
雛飾る笛見つからぬままにして
義経や雁風呂といふ浜に
雁風呂に人残されて津軽かな
ビル街に人影遠し春の雪
風と光ともに強くて春の雪
第二句集(平成十九年以後)
(四月〜六月)
罪と罰またこしらへる四月馬鹿
麗らかや人の痛みと苦しみと
桃の花やど引き払ふ波止場かな
踊子の遠き目をする桃の花
花の雨レクイエムならフォーレかな
ソプラノの独唱かなし花の冷
親王の花と伝へて花の雨
愁ひとは違ふものなる花疲
見納めと思へば風や初桜
それとなく別れを告げる花篝
川岸に主となりたる八重桜
八重桜その先に有る泉布観
浮世絵を見つめてゐても春うれひ
杣道を伝うて薄染桜かな
旅心しきりに起こり花は葉に
蕉風の字は読めずして日の永し
匂ふのみ辛夷の花と判る径
姫辛夷どこかで咲いてゐたやうな
村の名は常に変はりて亀の鳴く
亀鳴くやダムに沈みし村多く
牛追うて旅にしあれば日の永し
闘牛や伊達の家紋もくつきりと
思ひ出の中に沈めて花衣
ふらここや昔の事はさて置いて
生きる気をふるひ立たせて更衣
夏わらび国分寺跡と知らざりし
国亡び国また興り木瓜の花
春去りぬ諦めとまた哀しみに
円形の石畳踏む木下闇
藤棚の下の笑窪を思ひ出す
つば広きものを選びて夏帽子
紅白のつつじ光と渡り会ふ
訪問者まづ春蝉の事を言ふ
梔子の花に始まる異人坂
見にいかな雨の菖蒲の咲く内に
雨粒を弾く菖蒲の強さかな
五月雨やラムプ明るき家になる
一日に四五本のバス柿若葉
春の雨とぢ込められし天満かな
暮方や谷町筋の春の雨
我が顔を忘れし母や桐の花
句日記が介護日誌に麦の秋
麦の秋その奥にある平家村
端正な指揮を偲びて明け易き
夏至の日の少年ひとりボール蹴る
夜の汗にウインブルドンを見てしまふ
見回りの遅き帰りも出水かな
梅雨明けてまだ曇りたる隅田川
原罪は確かに有りし梅雨教会
へび苺ころがつてゐる罪の原
意のままに成らぬが梅雨の佳きところ
病葉をうつくしと見る大都会
大川やヽ濁りたる樟若葉
雨上りなほ中之島夏霞
憂ひ濃き日本のこころ夏薊
これやこのまだ年半ば蝉丸忌
(四月〜六月)
罪と罰またこしらへる四月馬鹿
麗らかや人の痛みと苦しみと
桃の花やど引き払ふ波止場かな
踊子の遠き目をする桃の花
花の雨レクイエムならフォーレかな
ソプラノの独唱かなし花の冷
親王の花と伝へて花の雨
愁ひとは違ふものなる花疲
見納めと思へば風や初桜
それとなく別れを告げる花篝
川岸に主となりたる八重桜
八重桜その先に有る泉布観
浮世絵を見つめてゐても春うれひ
杣道を伝うて薄染桜かな
旅心しきりに起こり花は葉に
蕉風の字は読めずして日の永し
匂ふのみ辛夷の花と判る径
姫辛夷どこかで咲いてゐたやうな
村の名は常に変はりて亀の鳴く
亀鳴くやダムに沈みし村多く
牛追うて旅にしあれば日の永し
闘牛や伊達の家紋もくつきりと
思ひ出の中に沈めて花衣
ふらここや昔の事はさて置いて
生きる気をふるひ立たせて更衣
夏わらび国分寺跡と知らざりし
国亡び国また興り木瓜の花
春去りぬ諦めとまた哀しみに
円形の石畳踏む木下闇
藤棚の下の笑窪を思ひ出す
つば広きものを選びて夏帽子
紅白のつつじ光と渡り会ふ
訪問者まづ春蝉の事を言ふ
梔子の花に始まる異人坂
見にいかな雨の菖蒲の咲く内に
雨粒を弾く菖蒲の強さかな
五月雨やラムプ明るき家になる
一日に四五本のバス柿若葉
春の雨とぢ込められし天満かな
暮方や谷町筋の春の雨
我が顔を忘れし母や桐の花
句日記が介護日誌に麦の秋
麦の秋その奥にある平家村
端正な指揮を偲びて明け易き
夏至の日の少年ひとりボール蹴る
夜の汗にウインブルドンを見てしまふ
見回りの遅き帰りも出水かな
梅雨明けてまだ曇りたる隅田川
原罪は確かに有りし梅雨教会
へび苺ころがつてゐる罪の原
意のままに成らぬが梅雨の佳きところ
病葉をうつくしと見る大都会
大川やヽ濁りたる樟若葉
雨上りなほ中之島夏霞
憂ひ濃き日本のこころ夏薊
これやこのまだ年半ば蝉丸忌
第二句集(平成十九年以後)
(十月〜十二月)
国籍は問はず松茸ソテーする
路地裏に風の道あり女郎花
さはやかに蹄の音の軽さかな
鹿火守ぺルーの人で在りしかな
行進の曲ひびきけり運動会
運動会インフルエンザの流行る前
台風の過ぎてまた来る気配かな
秋晴の望めぬ空やビルの街
骨拾ふ壷に一輪コスモスを
告別の径は思ひ出秋桜
敬老の日に父祖の地を売りにけり
虫の声聞く神社あり大都会
本売りてまた本を買ふ虫の声
パソコンも三台目なる秋の雨
紅葉して行方わからぬ尼の寺
炉話に打ち消す恋も有りにけり
樹の影を捜してゐるや小六月
天神の淡き筆跡小六月
山路来て湯の街やはり落葉宿
湯煙の色を変へたる時雨かな
この道や帰ること無き秋遍路
いつまでも喋る女やしぐれ宿
夕暮の寂しき時は小鳥来よ
色鳥のまた近づきぬ手風琴
天神も稲荷も小春日和かな
木枯に鼠小僧の話かな
盗賊の墓の円さよ冬ざるる
子供らは線ばかり描く冬木かな
泣きぬれて着膨れてまだ家を出ず
江戸絵図も枕辺に置き冬支度
陰暦の本放されず冬に入る
本店も閉めたままなり冬ざるる
所在なく胡桃を割りて気の紛れ
旅人の姿のままのクリスマス
闇汁や今日も仮寝の宿にゐて
園長は博士に扮し聖夜劇
ユダの出ぬ聖夜の劇のありしかな
忘年会断る文字の悴みて
棺に泣く灯はうつすらと寒さかな
寒菊の白きばかりが亡母らしく
狐火に霧の深きや上州路
夢さめて伊香保の宿の懐手
去る日々を拾ひ集めて冬帽子
(十月〜十二月)
国籍は問はず松茸ソテーする
路地裏に風の道あり女郎花
さはやかに蹄の音の軽さかな
鹿火守ぺルーの人で在りしかな
行進の曲ひびきけり運動会
運動会インフルエンザの流行る前
台風の過ぎてまた来る気配かな
秋晴の望めぬ空やビルの街
骨拾ふ壷に一輪コスモスを
告別の径は思ひ出秋桜
敬老の日に父祖の地を売りにけり
虫の声聞く神社あり大都会
本売りてまた本を買ふ虫の声
パソコンも三台目なる秋の雨
紅葉して行方わからぬ尼の寺
炉話に打ち消す恋も有りにけり
樹の影を捜してゐるや小六月
天神の淡き筆跡小六月
山路来て湯の街やはり落葉宿
湯煙の色を変へたる時雨かな
この道や帰ること無き秋遍路
いつまでも喋る女やしぐれ宿
夕暮の寂しき時は小鳥来よ
色鳥のまた近づきぬ手風琴
天神も稲荷も小春日和かな
木枯に鼠小僧の話かな
盗賊の墓の円さよ冬ざるる
子供らは線ばかり描く冬木かな
泣きぬれて着膨れてまだ家を出ず
江戸絵図も枕辺に置き冬支度
陰暦の本放されず冬に入る
本店も閉めたままなり冬ざるる
所在なく胡桃を割りて気の紛れ
旅人の姿のままのクリスマス
闇汁や今日も仮寝の宿にゐて
園長は博士に扮し聖夜劇
ユダの出ぬ聖夜の劇のありしかな
忘年会断る文字の悴みて
棺に泣く灯はうつすらと寒さかな
寒菊の白きばかりが亡母らしく
狐火に霧の深きや上州路
夢さめて伊香保の宿の懐手
去る日々を拾ひ集めて冬帽子