76 キー坊◆Uaaa
稲穂も揺れる恋揺れる。あいつはタクシードライバー。

この街でタクシードライバーになりたければ、履歴書も身分証明書も要らない。頭まで陽気なメキシコ人から、イエローキャブを奪うだけでいい。それで今日から個人タクシーの開業だ。
たまたまタクシーをパクったら、何も知らない客が乗り込んできやがった。いつまでも汚い商売をしているのもなんだ。ここは一丁、汗水垂らして働いてみるか。

バイスシティの客はせっかちだ。数キロ先の目的地まで、二分で行けって言いやがる。そのわりには、少々荒い運転ですぐ逃げ出す。
まったく、いい身分だぜ。
(EZ)
77 キー坊◆Uaaa
今日の客は恰幅のいい黒人紳士だ。毎度ご指名ありがとうございます。丁寧迅速、時間厳守。必ず無事にお届けします。
今日も今日とて街頭を薙ぎ倒し、通行人を撥ね飛ばしながら目的地へ急いでいると、客の紳士はチョコレート色の顔を真っ青にして怯えていた。
大丈夫。このタクシーの中は安全ですよ。
速さが売りのトミー・タクシーは、余裕を持って現地到着。毎度あり〜。
黒人紳士が降りたのを確認すると、ミラーに次の客の姿が映った。
はいはい、今行きますよ。
バックオーライ。


グヂャッ


生々しい音にタクシーを降りると、後輪の下で、先程の紳士がコレステロールの塊になっていた。

チョータイ締めてドア閉めて。私はタクシードライバー。
トミー・タクシーは、あなたを降ろすその時まで無事にお届け致します。

降ろすまでは。

ご指名、お待ちしております。
(EZ)